姫乃たまの「おそとで生きるもん!」第8回 伊豆大島でサバを釣る
こんにちは、姫乃たまです。
ほんとに来ちゃった、伊豆大島!
私がお酒を飲み始めたころ、セーラー服のコスプレで泥酔して、目の前で補導されそうになったお姉さんがいました。彼女はそういうお酒の場での遊び方(?)を教えてくれる良き友人となりました。
いつの間にか、当時の彼女の年齢を追い越したいま、友達と遊ぶとなるとすっかりお酒ばかり飲みに行くようになってしまった私は、密かに「大人って友達と何して遊んでるのかな」とも思っていたのです。
それが最近、どうやら彼女が釣りを始めたらしいと知り、連載担当:Nちゃんと一緒に伊豆大島まで連れて行ってもらうことになったのでした。やったー。
竹芝の客船ターミナルで久しぶりに会ったあゆみちゃんは、リュックサックにテトラポットのぬいぐるみをぶら下げていて、私は「硬いはずのものが柔らかいのっていいな」と思いました。
伊豆大島は伊豆諸島の中で最も大きく、最も首都圏に近い東京都の島です。
東海汽船(https://www.tokaikisen.co.jp)の「ジェット船」という明らかに速そうな名前の船に乗ると、竹芝客船ターミナルから1時間45分ほどで港に着きます。ほかにも夜に出発する大型客船があって、こちらは東京〜大島まで8時間ほど(波の状況によっては欠航する日もあります)。
ジェット船は「海のジェット機」とも言われていて、浮き足立って出航を待っていた乗客たちも、いざ出航すると快適な温度と揺れない船に守られて思わずうとうと。
窓の外はすぐに海と空と、時々ほかの船が通るだけの東京湾の景色に変わって、さっきまで自宅から忙しなく電車で移動していたのが信じられないほどです。
岡田港に到着すると、レンタカー屋さんがクルマで迎えに来てくれていました。
今日は2カ所の港で釣りをする予定なのと、予約している宿が岡田港からちょうど反対の場所にあるので、とにかくクルマがないと始まりません。大島はけっこう大きいのです。
貸し出された釣り用車両は手動レバーをくるくる回して窓を開けるタイプで、いまは亡き祖父のクルマを思い出して感動。
それにしても錆びています。第一印象が「錆びてるなあ」で、車内も錆びることができるところはすべてが錆びていました。
時速40㎞で走っても、120㎞くらいのスピードを出してる音がします! 電気自動車には出せないこの感じ、痺れるぜ。
島の端から端までクルマで30分ほど。島内にはコンビニがなくて、スーパーも19時ごろには全部閉まるので、釣りの前に必要な食材を買っておかなければいけません。今夜は釣った魚を調理する予定です。
釣れなかった時のためにカップラーメンを買うか協議しましたが、買ったら釣れなくなる気がしたので、まだ見ぬ魚のための調味料だけ買ってスーパーを後にしました。
ひとつめの釣りスポット・泉津港へ到着。
あゆみちゃんの持ってきたエサが、私の想像していた量をはるかに超えていたので、「こんなにあるなら絶対に釣りたい!」という謎のやる気が湧いてきました。
とりあえずライフジャケットを着たら、あまりに似合わなくてしばし時間が止まりました。
さっそく釣り始めたあゆみちゃんの隣で、Nちゃんと道具を準備。
前回の釣り堀体験の帰りに、ふたりで新宿の上州屋に寄ったのです。
初心者でも「サビキ」という釣り針がいっぱい付いた仕掛けなら釣りやすいらしく、エサも虫エサとか怖いやつじゃなくて、小さい網に撒き餌を入れればいいとのことで購入。
オキアミと呼ばれるこのエサ、触ると手が荒れる人がいるらしく、あゆみちゃんが皮膚を保護するクリームを貸してくれました。
それから作業しやすいように軍手の指先を切ったり、もたもたと準備していたら、初心者オーラが届いたのか地元のおじさんがやって来て手伝ってくれました。
しばらくするといきなり魚が釣れました。あの瞬間のときめきは忘れられません。水のきらめきみたいな気持ちでした。
サバの子どもです。
これがすぐに締めて血抜きをしないといけないそうで、ときめいたそばからあゆみちゃんに「首折って!」と言われてしどろもどろ。
てっきり、持って帰って調理の時に締めると思っていたので、心の準備ができていませんでした。
でもいつまでも握っていたら小サバが火傷しそうだし(魚の体温は人よりもずっと低いのです)、何より自分で釣って食べるからには、最後まで責任を持ちたいと思ってここ大島までやって来たのです。
エラに指を差し込んで力を込めると、まるで私のほうが首を折られたみたいに心臓が飛び跳ねました。
おじさんがお別れの時に、自分で釣ったイサキとカニ、それから自宅の庭になるというビワと夏みかんを渡してくれました。
私たちはクルマで次の釣りスポット・岡田港に移動し、釣りを続けます。
釣りってイスに座ってビールでも飲みながら、魚がかかるのをのんびり待つイメージでしたが、ひたすらエサを投げて、釣って、風に飛ばされないように気をつけて、思ったよりせわしないです。
でも夢中になっているので、頭がからっぽになって、時間はあっという間にすぎていきます。
この日はとにかく小サバが釣れる日で、3人でひたすら5〜6時間、小サバだけを釣りました。
ほんとにあっという間に夜になって、ヘッドランプをつけてまだまだ釣りを続けました。
釣果は3人で小サバ20匹弱ほど。
そろそろ宿に向かおうかと話し始めたところで、初めて小サバじゃない魚がかかって3人とも大興奮(魚の種類は分かりませんでしたが)。
こうやって釣りにハマるんだなと実感しながら、あゆみちゃんが「お父さんとお母さん連れてこーい」と言って、リリースしている姿を眺めていました。
さて、宿に行こうということでクルマに戻ると、エンジンがかかりません。
なんとバッテリーが上がっています。
近くで小サバを釣っていたお兄さんが電気を分けてくれることになったのですが、なぜかうまくいかなくてエンジンがかかりません。うわー、まじか。
レンタカー屋はすでに閉まっていて連絡が取れず。宿は徒歩だと約4時間。東京行きの船も最終便がなく……どうするどうなる大島の夜。
【次回予告欄を変更して、持ち物リスト!】
動きやすい服/防水シューズ/レインウェア/帽子/サングラス/手袋か軍手/ヘッドランプ/汚れてもいいタオル/ゴミ袋/ライフジャケット/虫除け/日焼け止め/皮膚保護クリーム/竿とリールと仕掛けとエサとおもりとバケツとクーラーボックス(まったくわからなかったので新宿の上州屋で店員さんに聞きました!)/氷(現地調達)/おやつ500円まで(全員忘れた)
※きっと書き忘れがあるので追加して使ってね!
【使用製品】
ヘッドランプ:ティカ(ペツル)
【問】アルテリア
℡.04-2968-3733
https://www.alteria.co.jp
【撮影協力】
東海汽船
℡.03-5472-9999
https://www.tokaikisen.co.jp/
【プロフィール】
姫乃たま(ひめの たま)@Himeeeno
1993年、東京都生まれ。10年間の地下アイドル活動を経て、2019年にメジャーデビュー。同年4月に地下アイドルの看板を下ろし、文筆業を中心にトークイベントにも数多く出演している。2015年、現役地下アイドルとして地下アイドルの生態をまとめた『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー)を出版。著書に『職業としての地下アイドル』(朝日新聞出版)、『周縁漫画界 漫画の世界で生きる14人のインタビュー集』(KADOKAWA)など。音楽活動では作詞と歌唱を手がけており、主な音楽作品に『パノラマ街道まっしぐら』『僕とジョルジュ』などがある。