68年経ってもなお人気!レトロかつ高機能なコールマンのクーラーボックス「スチールベルトクーラー」
変わらずに愛されている、アウトドアアイテムがある。機能性なのか、はたまたデザインなのか、長く選ばれ続けるには、それなりの理由があるのだろう。そして同時に、多くのキャンパーたちの思い出も含まれている。そんな逸品の歴史を辿る企画、第3回目はコールマンのクーラーボックスだ。
“弾薬ケース”がヒントになったクーラーボックス
キャンプ用品ブランドとして、誰もがその名を知る〈コールマン〉。キャンプ事情に疎い人でも、キャンプグッズといえばコールマンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか?
コールマンが誕生したのは、1901年のアメリカ・オクラホマ州。今から120年前に遡る。
ライト兄弟が有人動力飛行に成功した1903年、コールマンは自家製ランプの製造をスタート。1914年には世界で初めて屋外用のガソリンランタンを発売した。ロゴマークにランタンが使われているのは言わずもがな、同ブランドを象徴するアイテムだからだ。
そして、時代は変わる。
1918年に第一次世界大戦、1945年に第二次世界大戦が幕を閉じると、人々には自由な時間が増え、自動車が普及し、積極的にレジャーを楽しむ時代に突入していった。そんな激動の時代を経て1950年代に開発されたのが〈スチールベルトクーラー〉である。ガソリンランタン同様、コールマンを語るうえで外せない名品だ。
「初代モデルは、外側に亜鉛メッキ銅板、内側にはブリキを用いていました。軍隊で使用されていた“弾薬を運ぶケース”をヒントに開発されたと言われているそうです」と、コールマンマーケティング本部の梅園氏は話す。
そして1970年代に入ると、外側にスチール、内側にはプラスティック成型の素材にアップデート。
使用する断熱材は、保冷力をパワーアップさせるため、また環境にも配慮し時代とともに改良を重ねているというが、1970年代には現在のモデルとほぼ同じ仕様になった。
火災後の車内に残された、冷凍食材……⁉︎
スチールベルトクーラーは当時から保冷力の高さに定評があった。その証拠に、こんな伝説が残されている。
アメリカでスチールベルトクーラーが流行していたある日、自動車事故により車が大炎上。決死の消火活動を経て無事に鎮火したものの、当然車は真っ黒焦げの状態になってしまった。
しかし、その車内からは原型を留めたスチールベルトクーラーが発見された。しかも蓋を開けてみると、そこにはカチコチに凍ったままの冷凍エビがぎっしり詰まっていた……! というのだ。
クルマの火災ともなれば何百度という高温になっているだろうから、それに耐えただけでなく“中身まで守っていた”というのは本当に驚くべき性能である。
梅園氏によると「これが何年に起きた話なのかは不明」とのことだが、この一件により“スチールベルトクーラー最強説”が誕生したのは間違いないだろう。
シンプルのなかにある高機能
現在のスチールベルトクーラーは、ステンレスをスチール塗装し、断熱材に発泡ウレタンを使用している。
ステンレスとスチールは、どちらも強度のある金属。外側をそれら金属で二重構造にすることで耐久性を高め、内部を保護している。これは他のクーラーボックスには見られない頑丈なつくりで、高級感が漂う理由はここにあると筆者は感じている。
断熱材として使われている発泡ウレタンの厚みは3cmで、フタとボディに封入。
見えない部分なので分かりづらいが、保冷力に長けた発泡ウレタンを2種の金属とプラスティック成型の間に“サンドイッチ”することで、外気の影響を受けにくくしている。だから「暑い日でも中身がキンキンに冷えたまま」を実現できるのだ。
サイズは、横幅60×奥行42×高さ41cm。2Lペットボトルが縦置きできる高さがあり、12本収容できる。
人によってキャンプスタイルは様々なので、これが“大きすぎる”場合もあるが、保冷剤を入れることも考え、少し大きいと感じるくらいのサイズがクーラーボックスを選ぶときのポイントだと個人的には思っているので、キャンプ料理をこだわる人や、ファミリー層にはもってこいの大きさだろう。
そして、カラーバリエーションも魅力のひとつ。現行カラーのシルバー、バターナッツに加え、折に触れて復刻カラーやアニバーサリーカラーが登場しファンを沸かせている。
愛用者からは、「サイズも大きすぎず小さすぎずちょうど良い感じ。永年使用し続けているが錆びないし、一生使えそう」、「レトロな感じでカッコいい。2リットルのペットボトルが縦に入るのでとても便利」、「排水口があるので、水を溜めたり、帰ってきて洗ったりする際にとても便利」といった声が届いていると梅園氏は話す。
大自然の中で、キンキンに冷えたビールが飲みたい。そんなキャンパーの願いだって、スチールベルトクーラーがあればいとも簡単に叶えてくれるのだ。
キャンパーにとって「憧れのスチベル」。なぜ68年も愛されるのか
2022年で誕生から68年が経つが、これほど長きに渡って売れ続けるアイテムはそうない。当時のレトロさは残しつつ、保冷力や素材が時代とともに進化しているからこそ、令和になっても人気が衰えないのではないだろうか。
51Lという大きさ、約7.5kgという重さ、そしておよそ3万円という価格。これらを踏まえると決して“万人受け”するスペックではないが、大容量で、なおかつ保冷力が高く、デザインもカッコいい。
だから、いつの時代もキャンパーにとって「スチールベルトクーラー」は憧れの存在なのだろう。
取材協力/コールマン https://www.coleman.co.jp
写真提供/ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社 コールマン事業部