アパラチアン・トレイルを全線踏破した伝説の67歳女性の実話、ヤマケイから刊行
アメリカにある総距離3500kmを誇るアパラチアン・トレイルを女性で初めて全線踏破した女性の実話『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル』が発売された。
同書はベン・モンゴメリ著のノンフィクションで、 山岳・自然分野のメディア事業を手がける(株)山と溪谷社が刊行。原著『GRANDMA GATEWOOD'S WALK』は、2014年の「National Outdoor Book Award」を受賞している。
アパラチアン・トレイルは、アメリカ3大ロングトレイルのひとつ。春にスタートして秋にゴールするという、約6ヶ月を要する長いハイキングコースである。
このコースに挑戦するハイカーは年間数百人に上るが、彼らの憧れになっている人物こそがエマ・ゲイトウッド、通称グランマ・ゲイトウッドだ。
1957年、彼女は女性として初めてアパラチアン・トレイルをスルーハイク(一気に踏破すること)した。その時の彼女はなんと67歳!
テントも寝袋もなしで単独で歩き通した女性が生きてきた壮絶な過去
ハイキング経験のない彼女が、リュックの代わりに布袋を肩に担ぎ、登山靴の代わりにケッズのスニーカーを履き、寝袋の代わりに毛布にくるまりながら歩き通した逸話は、現代のハイカーたちに半ば伝説となって語り継がれてきた。
しかし、グランマ・ゲイトウッドが、なぜトレイルを歩こうと思ったのか、どんな人生を送ってきたのかについてはほとんど知られていない。
DV夫から逃れ、11人の子供、23人の孫とも離れて向かったロングトレイル
貧しい子供時代を生き抜き、夫の暴力を経験したグランマ・ゲイトウッド。夫のDVによって歯は折られ、全身のあざが消えることもなかった。
何度も家を出ては子供たちのことを思ってまた戻ることを繰り返す日々。やっと離婚できたときには結婚から34年の月日が流れていた。
人生の終盤でようやく手に入れた自由な時間。彼女が向かった先がアパラチアン・トレイルだった。
トレイルを、人生を歩き通す勇気をくれるグランマ・ゲイトウッド
極寒の山頂で毛布一枚にくるまりながら、また別の日は焚き火で温めた石の上で夜を過ごしながら、膝の痛みを抱えて1日に20kmを歩き続けたグランマ・ゲイトウッドから学ぶ、強さとたくましさ、そして優しさと自然への愛に共感する人は多いことだろう。
本書を通して、時間と空間を超えて彼女と共に歩き旅をする時間は、人生の苦難を乗り越えるための力にきっとなるに違いない。
書名:『グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル』
著者:ベン・モンゴメリ
訳者:浜本マヤ
定価:2,640円(本体2,400円+税10%)
体裁:四六判
ISBN:978-4635172066
出版社:山と溪谷社