人気焚き火ギアメーカー・笑’sの製造現場に潜入! ものづくりの秘密とは?
20年近くもの長きにわたりコツコツと焚き火台開発を続けている「笑's」。人気焚き火台はどのように開発・製造されているのか。その秘密を探る。
笑’sは、板金工場「昭和プレス」のアウトドアブランド。リーマンショックのあおりで倒産寸前だった2008年、二代目社長・高久笑一さんが遊びで作り、キャンプ仲間に評判だった自作焚き火台の販売を始めたのが笑’sの始まりだ。
笑's 高久笑一社長は、自身のブランドについて、こう話す。
まさかソロがこれほど注目される時代がくるとは
「昭和プレスは創業60年を迎え、今年は記念モデルを発売中です。笑’sを始めた時は、自分が使いたいものをということでコンパクトなソロ用焚き火台や薪ストーブを作っていました。ソロキャンプなんて非常にニッチな市場だったんですが、まさか今、こんなにソロが注目されて大手メーカーが参入するとは」
笑’sの製品は高いといわれることがあるそうだが、10年以上使い続けているユーザーは珍しくない。
ただサイズを合わせるだけじゃないズレない、安全性も確保
鉄板ひとつとっても、スタッキングできるサイズにするだけではダメ。載せたときにズレ落ちないよういろいろな工夫を試して、最適解を導き出している。「試作の山、こんなに増やして」と叱られるそうだが、これは譲れない。
「生産数が違うので大手とは値段で勝負できません。その代わりローインパクトで高燃焼な焚き火台にこだわり、溶接や蝶番を使わず歪んでもバラバラにならず長く使えるようにしています。買い替えが進まないので商売下手なんですがね」
もちろん流行のスタイルを研究しているが、決して流行に流されているわけではない。あくまでマイペースだ。
旧工場のおよそ3倍に拡張
2020年夏に移転した工場は、旧工場の約3倍の広さとなり上階には倉庫も備えている。それだけ広くても、試作品の扱いには困るとか。
150×300cmのパンチ&レーザー加工ができる大型複合マシンを導入。
移転を機に大型の最新複合マシンを導入。迫力満点だ。組み立てと検品は1台ずつ手仕事で。最新技術と手作業から緻密な製品が生まれる。
「軽くて携行性がいいからといって必ずしもチタンの焚き火台や薪ストーブが売れるというわけではないし、ホント、商売って難しいですね。二次燃焼ができる焚き火台が注目されているけれど、うちで納得できる製品を作るには重くなるし、ひと手間加えることで価格も高くなる。手に取りにくいかと思って開発を中断しています」とユーザー目線は不滅だ。
燃えすぎ、燃えなさすぎであきらめたアイデアも
製品、サンプル、開発途中の製品が並ぶ棚。「二次燃焼型も考えたけどきれいな炎にならない。反対に燃えすぎて危険だと断念したものも。そんな感じで放り出しているものがいっぱいあります。どうするんだ、これ(笑)」
炎が見える薪ストーブを生んだのは「笑’s」
日本でサイドビューガラス入りの折りたたみ式薪ストーブを作ったのは笑’sが最初。「燃焼中に水をかけるなど繰り返し実験をして、何種類かのガラスから割れないものを探し出しました」
20年以上焚き火台開発を続けている笑さんだが、途中で飽きたことはないのだろうか。
「夏休みもずーっと野営地にこもっていましたが、焚き火に飽きたことはありません。不思議ですね」
焚き火台一筋、焚き火台愛にあふれた笑さんは今後もブレずに硬派な製品を生み続けるにちがいない。
出典:GARVY2022年10月号
PHOTO/鈴木優太 TEXT/大森弘恵