【WEB限定コラム】みちのく潮風トレイルを行く 本編 Vol.10
文・写真/斉藤正史
本編 Vol.10「浜の駅 おもと愛土館での出会い」
今回のルート:岩手県・宮古市→田老町→岩本町→普代村→野田村→久慈市
岩手県に入り、道路を歩いたり、トレイルルートを歩いたりと、なかなか予定通りとはいかず、この日はずいぶん早く岩本町に入ったのでした。時計を見ると午後の2時。もう少し歩けるから先に行こうと思っていたのですが、ふと宮古自然保護官事務所のアクティブレンジャー古舘さんに言われたことを思い出しました。
「浜の駅 おもと愛土館の向かいに住む、駄菓子屋さんの鈴木さんは、みちのくトレイルに協力してくださる方ですので、顔を出してみてくださいね!」
岩本町小本の中心付近エリアを通過するトレイルのルートは、峠を越えて、浜の駅 おもと愛土館の脇を抜けるように設定されていました。
浜の駅 おもと愛土館に着くと、非常ににぎわっていました。バックパックをベンチに下し、中を見学しようかと思っていると、すぐに声を掛けられました。
「みちのくを歩いている人かい?」
声を掛けてくれたのが、なんと鈴木さんでした。ちょうど某新聞社の記者さんと話をしていました。僕が訪れたのは、浜の駅 おもと愛土館が台風19号の被害から復旧し、全面再オープンしたタイミングだったのでした。
鈴木さんと色々お話をしていると、「今日はこの辺にテント張って泊まっていきなさい」といった流れに。僕も急ぐ旅ではないので、そうすることにしたのでした。
鈴木さん「何、飲みたい??」
MASA 「大丈夫です」
鈴木さん「いいの、俺が飲みたいの!」
というと、鈴木さんの店先で宴会をすることになりました。
日が暮れると、鈴木さんが愛土館で買ってきてくれた刺身を出してくれて、酒盛りは始まりました。陽が沈み始めると、一気に気温が低くなってきていました。もう季節は秋です。
店のドアを閉め、ヒーターを付けてくれました。鈴木さんのお話を聞くと、岩本町のこの界隈も台風の被害でようやく復旧したばかりだそうでした。あたりには石灰がまかれていた跡があったのでそれは感じていましたし、小さな沢や川が氾濫していた形跡は、峠を歩きながらも見ることが出来たのでした。2011年以降、2016年の台風10号、そして今回の台風19号と、被災地では震災以降3回目の大きな被害になったそうです。
「震災含めて、わずか8年で3回だよ……」ぼそっと呟き、ため息を一瞬ついた鈴木さんの横顔が全てを物語っているように思いました。
現地に行って、そこに住む方とお話をしないとわからないことがたくさんあることを改めて感じます。鈴木さんからは、いろいろなおつまみを出して頂き、次第に家族の話や鈴木さんの現役時代のお話を聞くこともできました。
「大丈夫、たいして重くないから持っていきなさい」と、たくさん頂き物をしました。本来、ハイカーは歩く際に荷物を増やしたくないのですが、鈴木さんの心遣いを考えると、断るわけにはいきませんでした。
まさに有難いという言葉の意味を体感します。僕はこうして頂き物をし、荷物が増えて重くなることを「幸せの重さ」として背負うことにしています。僕を幸せな気持ちにしてくれる思いのある頂き物は幸せです。だから重い。でも背負う価値があると僕は思うのです。
「Weight of Happiness」=幸せの重さ。これは僕のブログのタイトルでもあります。きっと、幸せって重いのかもしれないと、改めてみちのく潮風トレイルを歩きながら思いました。
つづく
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