知っていれば焚き火が変わる!プロが教える薪の違い
焚き火で薪の種類を気にする人は多くない。
しかし、木によってそれぞれの特徴があり、用途も変われば、香り、音、炎の色も異なる。
そういう木ごとの違いを知れば、こだわりたくなってくるはず。
そこで薪のプロフェッショナルであるiLbf(イルビフ)の堀之内健一郎さんに薪の種類について教えてもらった。
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iLbf(イルビフ) 堀之内健一郎さん
火とアウトドアの専門店iLbf (イルビフ)の店主であり、焚き火の楽しさを多くの人に広めてきた人物。
国内では珍しい焚き火の専門店を2016年にオープンすると、こだわりのセレクトでマニアからも支持される存在となった。
https://ilbf.jimdo.com/
楢(なら)— ピザ窯にも使われている、調理に向いた万能性
火付き○/火持ち○/入手○
流通量も多く、生産体制が整っているので、入手しやすい薪の一種。
火付きもよく、火持ちがいい、という相反する性質を兼ね備えている。
匂いも少なく、食品に影響を与えないことから、料理などに適している。ピザ窯などでも多く使われているのがこれ。
焚き火の初心者にも扱いやすく、調理のときも暖房用にも使える、バランスの取れたおすすめの薪。
樫(かし)— 小さな斑点が目印。ズシリと重たくて硬い木
火付き×/火持ち○/入手△
手に取るとズシリと重たさを感じる。
木材の内側表面を見てみると、小さな点が並び、繊維が詰まっているのがわかる。
乾燥するのにも時間がかかり、硬い木質が特徴。
なかなか火が付きにくいが、火が付くと安定しているので、炉の温度が上がった焚き火の後半に投入したり、薪ストーブの利用にちょうどいい。
焼けると薬のような香りが漂ってくる。
榎(えのき)— 青い炎に癒やされる。入手困難で趣向性が高い
火付き○/火持ち△/入手△
入手困難な薪のひとつ。木材の乾燥で急に軽くなる木質がある。
乾燥の途中ではアーモンドのような香りを発する。
火付きがいいので、焚き火の前半に利用するのがおすすめ。
さらに、火が安定すると、青い炎が出てくるのが特徴。
この炎の色を求めて、焚き火や薪ストーブなどのジャンルを問わずに、炎を観賞するために購入する人も多いとか。
椚(くぬぎ)— パチパチと薪のはぜる音を楽しむ雰囲気重視
火付き×/火持ち○/入手○
樹皮の形状が楢に似ているが、ひとつひとつの凹凸が大きい。
内部は樫のように繊維が詰まっていて、硬いのが特徴。
国内の広い範囲に分布している樹木でもある。
火持ちがよく、焚き火の後半に投入するのがいい。
また、「パチパチ」と音がするのが特徴で、雰囲気を重視する人に好まれる。
癒やし目的の焚き火や薪ストーブなどで使われることが多い。
椣(しで)— パカンときれいに割れて薪割りが簡単!
火付き○/火持ち○/入手△
木自体は硬いが、きれいに割れてくれるので、薪割りなどの加工がしやすい木質を持っている。
しかし、流通量が少なく、入手困難な薪でもある。
火付きがよく、火持ちがいい性質を持っている。
燃えたあとにも、薪の形が残っているので、炭のような使い方ができるのも特徴。
炎が落ち着くと温度が安定するので、調理などに使用するのが適している。
桜(さくら)— おなじみの桜の木も薪となれば香りが立つ
火付き○/火持ち△/入手△
桜は日本人にとってなじみがあるので、樹皮を見てわかる人も多い。
火付きはいいが、火持ちが悪いので、薪ストーブなどのスタート時などにもよく使われている。
最大の特徴は燃やしたときの香り。
スモーク料理などにも利用される桜チップ同様に、特徴のある香りがある。
料理では使いづらくなるが、桜の香りを求めて購入するユーザーも多いという。
欅(けやき)— 大工も敬遠する肌荒れ具合が特徴
火付き○/火持ち○/入手○
欅の見分け方は、内側の状態をチェックすればすぐにわかる。
内側の木肌が荒れているのが特徴だ。
薪を割ったとき、きれいに割れず、毛羽立った状態になってしまう。
火を付けると荒れた表面から燃えていくのがわかる。
燃やすと、心地よい香りが立つのが特徴。
若い木は香りが強いが、古木や安定した木は甘い香りがしてくる。
薪としても扱いやすい。
栗(くり)— なかなか巡り合わない珍しさを楽しんでみる
火付き○/火持ち△/入手×
薪には産業用とその他(農作物や自然林)の2系統の木が使われていて、農作物用や自然林などのその他の木は、薪として伐採されることが少ない。
特に栗は希少価値の高い存在。
燃焼時の音に特徴があり、グツグツ、ボツボツ、といった低い音を発することから、その癒やし効果を求めて観賞用に購入する人が多い。
若い木だと水分量が多く、強くはぜるので注意が必要。
梅(うめ)— オレンジ色の木肌が特徴。その香りに癒やされる
火付き○/火持ち△/入手×
栗と同じように希少価値の高い薪。
木肌に特徴があり、オレンジ色のようなブラウン系統のカラーで、色が濃いのが特徴。
木がまっすくに成長しないことから、大きな薪やまっすぐな薪は少ない。
燃やしたときの香りが強く、調理にはあまり向かないので、観賞用として利用するのがおすすめ。
希少価値が高いこともあり、その燃え方自体を楽しむ薪といえる。
【危険!】焚き火に適さない木もある
焚き火をするとき、薪拾いをする人も多いだろう。
しかし、焚き火に適さない木もあるので注意が必要。
例えば漆系の木は、触れたときと同様にアレルギー反応を起こす場合もある。
また、上の写真のキョウチクトウは燃やした時に毒を発するので危険だ。
PHOTO/中里慎一郎
TEXT/渡辺圭史
出典/ガルヴィ2020年12月号