今こそ北海道を知る!アイヌの知識入門
明治より以前の時代、北海道はアイヌ民族の世界・アイヌモシリだった。
その北海道の自然を知りつくし、豊かな精神世界を育んできたアイヌの文化を学ぼう。
今回はアイヌの生活について。後半ではキャンプで作れるアイヌ料理も紹介する。
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アイヌ伝統の仕掛け弓・アマッポ
アマッポは自動発射式の仕掛け弓だ。
獣道を横切る位置に仕掛け、張り糸に何者かが触れれば矢が発射される構造。
仕掛けた矢の先端には毒が塗られているため、たとえ猛獣の熊であっても1時間以内に絶命するという。
だが人間がかかる事故もあり、明治初期に使用が禁止された。
毛皮用の獣は、矢を使わず捕える
油を塗った桶。頭を突っ込んだら…
漫画「ゴールデンカムイ」には「桶を使った罠」で狐を捕える場面があるが、これは幕末の探検家・松浦武四郎の旅日記「十勝日誌」に実際に登場する逸話だ。
彼の案内役を務めていたアイヌ青年が、内側に油を塗って釘を打ち込んだ桶を野に仕掛け、知らずに頭を突っ込んだ狐を打ち殺したという。
アイヌ世界でも、狐は化ける
日本本土で狐と言えばお稲荷さんの使いであり、人間をたぶらかす存在。
アイヌ文化でも、狐は化けるものだった。
ちなみに狐が化けたらしい人間には、干しイクラを食わせればいいという。
干しイクラは歯に粘りつくので、口に手を入れて取ろうとしている間に正体を現してしまうとか。
松明と鉤銛で神の魚を捕える
晩秋の風物詩は松明漁
漁期も終盤の晩秋に、2人か3人一組が舟に乗り、夜の松明漁を行う。
1人が樺皮松明で川を照らし、もう1人が銛で鮭を突く。
松明持ちはなぜか女性がいいとされ、メンバーに女性がいない場合は腰に杓子をさして女性の振りをした。
松明漁は川の鮭を驚かすので、鮭漁の最盛期には行わない。
本来の食料を、逃さないよう捕える
鮭はアイヌ語でカムイチェプ(神の魚)、あるいはシペ(本来の食物)と呼ばれていた。
鮭を捕る際は、回転式の銛であるマレクを使った。
これは棹の脇に鉄鉤を取り付けたような道具で、水中の鮭を突けば鉤が一回転して、捕えた鮭を棹に押さえつけて逃さない仕組みになっている。
アイヌの星座は、生活に即したイメージ
2艘の舟をカシオペア座の形にする
水深がある場所で鮭を捕える際は、4人ほどで2艘の丸木舟の間に網を張って鮭を追い込む。
ちなみにその姿はWの形になるため、秋の夜空に輝くW型のカシオペア座は、アイヌ語ではヤーシ・ノッカ・ノチゥ(網曳き型の星)と呼ばれている。
新鮮な鮭はタタキに、残りは乾燥保存
新鮮な鮭は生で食べる。
鮭の頭部の軟骨、エラ、白子、鰭を山刀で丹念に叩いて塩で味付け、ネギを薬味に効かせたチタタプ(タタキ)、初冬に獲れた鮭を凍らせ、火であぶって溶かしながら食べるルイペ(溶けた食べ物)など。
鮭の大半は乾燥保存して、一年を通じて汁物の具などに利用する。
キャンプで食べたいアイヌ料理
ユクオハウ(鹿肉スープ)
材料(4人前)
エゾシカの骨付きロースかバラ肉 500g
ジャガイモ 中4個
カブ 中2個
マイタケ 1パック
行者ニンニク 4、5本
長ネギ 10㎝ほど
昆布 10㎝ほど
煮干し 10尾ほど
塩 適量
水 4カップ
作り方
①鹿肉は前の晩に大鍋で2時間ほど煮て火から下し、アクと脂気を抜く。
②大鍋に水を注ぎ、頭やはらわたを取った煮干し、昆布を30分以上漬け込んだ後、火にかけて出汁を取る。
③下ごしらえを済ませた鹿肉と鹿の煮汁を出汁に入れ、1時間弱ほど煮込む。
ジャガイモとカブの皮を剥いて食べやすい大きさに刻み、鹿肉の鍋に入れて一緒に煮こむ。
④野菜類が軟らかくなったら、食べやすい大きさに刻んだマイタケとカブの葉を入れる。
火が通ったら塩で味を調え、みじん切りにした長ネギと行者ニンニクを薬味として散らす。
アイヌ料理の味付けは、基本的には少量の塩のみ。
それで物足りなければ、自分のお好のみの味付けにしてかまわない。
少量の醤油を加えてもいい。味噌仕立てにしてもうまい。
チポロラタシケプ(ジャガイモのイクラ和え)
材料(4人前)
ジャガイモ 4個
イクラ 50g
塩 適量
作り方
①ジャガイモは洗い、皮ごと柔らかくなるまで茹でる。
②茹で上がったジャガイモは皮を剥き、潰して塩で味付けする。
③イクラを加え、練り混ぜて完成。
成熟した鮭の卵は堅いので「本来」の製法ではイクラを潰して火を通したうえで芋と混ぜる。
でもスーパーなどで買ったイクラは、そのまま混ぜてもかまわない。
出典/ガルヴィ2018年10月号
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