キャンプに密接な関係があるアイヌ文化をキャンプ飯で再現!
明治より以前の時代、北海道はアイヌ民族の世界・アイヌモシリだった。
その北海道の自然を知りつくし、豊かな精神世界を育んできたアイヌの文化を学ぼう。
今回はアイヌの人たちが培ってきた技術について。後半ではキャンプで作れるアイヌ料理も紹介する。
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■アイヌ式、火起こしの知識
アイヌ式の発火法とは?
江戸時代のアイヌは、火起こしには火打石を使っていた。
火打石がないときは、アイヌ語でチキサニ(我ら擦る木)と呼ばれるハルニレの木を擦り合わせ、その摩擦熱で発火させる。
ハルニレの木はよく燃えて火持ちも良い。
だが繊維がねじれて締まっているため、薪割りには相当に苦労する。
アウトドアの役に立つ白樺
白樺の皮はよく燃えるから焚き付けに最適なことは北日本のキャンパーの常識。
もちろんアイヌ民族も白樺の利点を生かし、厚く剥いた皮をねじって点火し「松明」にした。
先端を割った木に挟んで夜の川、あるいは屋内を照らす。
縄文時代から知られていたらしい、北日本の生活の知恵だ。
■雪の上では火は焚けない。だから…
火の神様を閉じこめない
漫画「ゴールデンカムイ」、炊事の場面では、飯ごうや鉄鍋は必ず三脚で吊って火にかけられている。
実際にアイヌは鍋を火にかける際は自在鉤や三脚を使い、野外の炊事でも石などで「かまど」を作らなかった。
カマドや薪ストーブは「火の神様を閉じこめる」として不評だったという。
丸太を敷いて火床を作る
冬の野営の命である火。だが雪の上で直に火を焚けば雪解け水で火が消えてしまう。
だから踏み固めた雪の上に生木の丸太を何本も敷いて火床を作り、その上で火を起こす。
丸太がロストルの役目を果たし、燃焼が促進されて好都合だ。
燃料は生木でも燃えやすいヤチダモがよい。
ウオータージャグが無い時代、水はどう運ぶ?
日本は水筒、アイヌは水袋
アウトドアで必須の水筒やウオータージャグ。
日本本土と異なり、寒冷な北海道では水筒にできるような太い竹やヒョウタンが育たない。
だからアイヌが携帯用の水入れに用いたのは動物性の素材だった。
鹿や熊の膀胱、あるいは胃袋をきれいに洗った上で伸ばし、「水袋」として持参する。
水場が無ければ樹液を使う
春先のシラカバの幹に鉈で傷をつければ、樹液が滴るほどに流れ出す。
アイヌはシラカバ樹液をタッニワッカ(シラカバの水)と呼び、緊急用の飲料水に使っていた。
またイタヤカエデの幹からはメープルシロップに似た甘い樹液が出る。
厳寒期に凍らせた物をアイスキャンデーのように楽しんだ。
夏はフキ小屋、冬は松葉小屋
野営にはシェルター。アイヌ語でクチャやカシと呼ばれる小屋は、夏と冬で素材が違う、夏用の小屋は楊の枝で骨組を組み、蕗の葉を重ねる。
一方で冬用の小屋は、冬でも枯れないエゾマツやトドマツの葉を重ねた物。
冬でも小屋を作らず、風上に松葉を立てただけで休む猛者もいた。
■キャンプで食べたいアイヌ料理
ユクチタタプ(鹿肉のタタキ)
材料(4人前)
エゾシカのロース肉 500g
長ネギ 10㎝ほど
行者ニンニク 4本
塩 小さじ半分
片栗粉 小さじ1杯
サラダ油 大さじ半分
作り方
①鹿肉は、筋や脂身を取り除きながら小さく刻む。
②刻んだ鹿肉を、山刀のような重みのある刃物で叩く。
③行者ニンニクとネギをみじん切りにした上、ミンチになった肉に混ぜてさらに叩く。
④塩と片栗粉を加えて練り混ぜ、2cm以内の厚さにまとめる。
⑤スキレットを熱して油を引き、④を焼く。内部までしっかり火が通ったら完成。
チサッスイェプ(炊き込み飯)
材料(4合分)
白米 3合
アワ、ヒエ、キビなど雑穀 1合
金時豆の水煮 10粒ほど
ラード 大さじ半分
塩 一つまみ
作り方
①米はよく研ぎ、4合炊きの飯ごうに入れる。
②雑穀は水で洗い、米の上に敷く。その上に豆を載せ、ラードと塩を加える。
4合分の水加減に整えた上、30分ほど吸水させる。
③②の飯ごうに蓋をして火にかけ、「始めチョロチョロ 中パッパ ブツブツ言ったら火を引いて」の火加減で焚き上げる。火から下して15分ほど蒸らす。
④全体をよく混ぜ合わせて完成
炊く際に動物性の脂肪を加えるのがポイント。
本来は熊の脂や鱈の肝油が使われるが、ここではラードを使った。
出典/ガルヴィ2018年10月号
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