上級キャンパーが徹底解説!意外と知らないサウナキャンプの楽しみ方と注意点とは?
近年、盛り上がりを見せているサウナキャンプ。
サウナ付きのキャンプ場やテントサウナができる施設も増えてきた。
そこで今回は、Sauna Camp.代表の大西洋さんにサウナキャンプの楽しみ方と注意点を徹底解説してもらった!
■Sauna Camp. 大西 洋さん
サウナキャンプの文化を日本に広めているSauna Camp.代表。
テントサウナ「NORZH」代理店を務め、イベントプロデュースも多数。
アウトドアで「ととのう」すばらしさを伝えるべく、誰もがテントサウナを安全かつ気軽に、さまざまな場所で楽しめる未来を目指して日々活動している。
■サウナキャンプの魅力
サウナの本場フィンランドと同じ体験が、サウナキャンプならできる、と大西さんは語る。
「サウナキャンプなら、本場フィンランドと同じ体験ができることが大きいと思います。
フィンランドでは、サウナから湖へ飛び込める場所がたくさんあります。
日本でも少しずつ増えてきましたが、まだまだ数は多くありません。
しかし、テントサウナがあれば、本場と同じ大自然の水風呂へ入ることができます」
テントサウナは世界最小単位のプライベートサウナ
1999年、フィンランドのsavotta社が、初めてテントサウナを一般向けに商品化したのが、サウナキャンプの起源といわれている。
日本では、2009年に初めてテントサウナが行われ、本格的に流行しはじめたのは2018年ごろからで、現在に至るという。
「テントサウナは世界最小単位のプライベートサウナです。
日本のサウナは、基本的には公衆浴場なので、他人との共存が不可避。
しかし、プライベートサウナなら自分の好きなアロマで「ロウリュ」を楽しむことができるし、迷惑にならない範囲で仲間とおしゃべりすることもできます。
また、男女一緒に楽しめるのも大きな魅力です」
なぜ、これほどサウナキャンプの人気が広がっているのだろうか? 大西さんの見解を聞いてみる。
「サウナ、キャンプともに人気が高まっているので、ある意味では必然といえます。
サウナとキャンプのどちらにも共通することは、自然を楽しむ行為であること。
デジタルデバイスに一日中触れている現代人は、どこか自然とのふれあいを求めているのだと思います。
サウナは、〝自然と一体化する装置〟ともいわれているので」
薪に火を入れて体をあたため、冷たい湖でクールダウンする。
森の風に吹かれていると、何も考えられない穏やかな気持ちよさがやってきて、自分と世界の境目が曖昧になるような、独特のリラックス感覚があるという。
「生まれ変わったようなスッキリ感は、自然のなかのサウナの方が圧倒的に強いです」
つまり、サウナが本来もつすばらしさを体感しやすいことが、人気の一因だと大西さんは語る。
ビギナーにとっては春夏がベストシーズン
さて、サウナキャンプが楽しめる季節だが、ビギナーにとっては春夏がベストシーズン。もちろん秋でも楽しめる。
「個人的には冬に楽しむのが好きです。冬はキャンプ場に人が少なくて落ち着いていて、水風呂も冷えているし、空気が本場に近くて気持ちいいです。
冬の湖畔でテントサウナをぜひ楽しんでみてください」と大西さん。
つまり、オールシーズン楽しめるということ。
しかし、エキスパートの大西さんのように、いきなり雪中サウナを楽しむのはハードルが高い。
やはり、まずは春〜秋に一度チャレンジしてみてからのほうがいいだろう。
サウナ自体にあまり慣れていない人は、まずは一般的なサウナ施設で試してからでも遅くない。
■サウナキャンプにはどんなアイテムが必要?
サウナキャンプを行うためのアイテムを揃えると予算はいくらか?
「購入代は備品含めて、おおよそ20~25万円程度」と大西さん。
いきなりすべてを購入するのが厳しい場合は、テントサウナがあるキャンプ場で試してみるのをおすすめしたい。
「半常設やキャンプ場のレンタルなど、直接管理下にある施設がベターです。
おおよそ1名4000~5000円程度の体験料金が相場です。ただし、利用する人数で変動することもあります」
気をつけたいのがレンタル。すべて安全管理ができている業者ばかりではないとのこと。
「半常設やキャンプ場のレンタル以外は、テントサウナのレンタルはあまり推奨しません」
サウナキャンプの必須アイテム
必須アイテムは、テントサウナ(テント、ストーブ)、サウナストーン、ベンチ、バケツ、柄杓、耐熱グローブ、火ばさみ、スコップ、灰捨てバケツ、温度計、一酸化炭素チェッカー、鋳造ペグ、鋳造ハンマー、着火剤、薪。
テントサウナは最小3㎡さえあればでき、使わないときはたたんでしまっておけるモバイル性が強み。
ウオーターアクティビティとの相性も抜群。
サウナハットはサウナ好きには必須アイテムのひとつ。
熱気から頭を守るのはもちろん、サウナムードを盛り上げてくれる。
水着、かかとの固定ができるサンダル、サウナポンチョなど、ウエア類も準備しておきたいアイテム。
サウナポンチョは、川や湖から上がって外気浴を行う際に体を冷やし過ぎないように着る。
また、一般的なサウナ施設と違うので、必ず水着は着用すること。
タオル生地のサウナポンチョなどがあれば、水着でキャンプ場をウロウロしなくてすむ。
キャンプ場は、サウナに来ている人だけでないことを自覚して、周囲にいるキャンパーへの気遣いも忘れずに。
あると便利なアイテム
あると便利なものは、テント内で使用するアロマオイル。
大西さんお気に入りアイテムはフィンランド「OSMIA」のアロマオイル。
ロウリュをした際に最も香りが立つようにチューニングされている。
全身をマッサージしてくれる白樺の葉・ヴィヒタ。
こういった細かな小物が揃ってくると、あなたもいよいよサウナキャンパーの仲間入り。
■サウナキャンプで注意すること
サウナキャンプの現状について大西さんはこう語る。
「認知度が向上するにつれて、楽しめるフィールドが増えてきたり、キャンプ場でも好奇な目で見られなくなったのはうれしく感じています。
以前はおかしな人々という目で見られることもよくありましたが、今は『TVで見たことある!』と好意的な声が増えてきました」
とはいえ、人気が出て、ユーザーが増えることによって、トラブルも増えている。
次なるステージは、「安全とマナーについて啓蒙」と大西さんも声を強める。
「テントサウナは、キャンパー目線で見ればレベルの高い遊びかもしれません。しっかりとアウトドアに関する知識をもってのぞまないと、火傷や火災、一酸化炭素中毒といった重大事故にもつながりかねません」
では、具体的にどんなことに注意すればいいだろうか。
知らないと命にかかわることもある
季節は問わないサウナキャンプだが、気象条件などのコンディション確認は最重要項目。
せっかくの楽しいサウナが、悲しい事故になっては元も子もないからだ。
「多少の雨なら問題ありませんが、風の強い日は危険なためNG。
天気予報で、風速5m以上の予報が出ている場合は行わないほうがいいと思います」と大西さん。
雪中サウナはおすすめだが、とはいえ、大雪など荒天の日も避ける。そもそもキャンプ自体も中止したほうがいい。
「また、酒を飲んだあとや、日が暮れたあとに川や湖へ入るのは絶対にNGです。
水難事故を引き起こします。子どもが一緒の場合は、絶対に目を離さないように」
どんなキャンプ場でも楽しめる?
サウナキャンプを行うためのキャンプ場の条件としては、テントサウナの設営、火器の使用、水遊びがOKで、テントサウナが禁じられていないキャンプ場が必須条件となる。
まずは、キャンプ場に確認して、禁止されていないかを確認すること。
キャンプ場内で禁止されていなくても、「テントサウナ区画」としてサイトが区分けされていることもある。
こちらも必ずキャンプ場の受付時に確認してほしい。
テントの設置場所としては、水風呂代わりとなる水辺までの導線ができるだけ近くて、スムーズであることが設営の重要ポイントとなる。
また、テントやストーブなど、機材が多い。それらの出し入れをするために、クルマが設置場所に横付けできることも理想条件といえるだろう。
安全かつ配慮のあるサウナキャンプを
このブームに乗じて、安全性に疑問があったり、不十分な性能のアイテムを「テントサウナ」と称して、安価に販売する例も目にするようになったと大西さんは話す。
「マナーについても、静かに焚き火を楽しむ人や釣り人がいる真横で、大声を出しながら川や湖へ飛び込んだりする無配慮な人も増えてきました」
裸に近い水着でうろうろしている人がいるという理由だけで、テントサウナが禁止になってしまったキャンプ場もある。
「ユーザーがアウトドアの正しい知識を身につけ、製品や運用方法の『安全情報』に気軽にアクセスでき、マナーをみんなで啓蒙し合うような場を、業界として設けていく予定です」
安全面とマナーに十分な注意を払いながら、サウナキャンプを楽しみたい。
TEXT/大橋保之(カーネル)
取材協力/Sauna Camp.
出典/ガルヴィ2022年10月号