【サバイバル】姫乃たまの「おそとで生きるもん!」 第2回:竹を刈って流しそうめん(後編)【キャンプ】
姫乃たまの「おそとで生きるもん!」
こんにちは。無事に竹を刈って都内へ戻ってきたのに、まだナタを握っている姫乃たまです。
先ほど、「自宅の庭を流しそうめんの会場にしていいよ」という、懐が深い友人の家に到着したのですが、なんと今度は想定外の草刈りが待っていました。
2カ月前の下見の時にはさっぱりしていた庭が、腰まで草がわんさか伸びてワイルドになっています。完全なる誤算……。やはり自然には敵いません。
しかし、竹林に入って竹を倒したことにより、私の心も強くなっているのです。ナタもあります。竹に比べれば草刈りくらい余裕です。
と思ったけれど、量が多い!
どうして伐採と流しそうめんを別日にしなかったんだろう。口には出せないみんなの後悔が、もやもやと庭に立ち込めはじめています。ついでに雨雲も近づいてきました。
早く組み立てなければ、日が暮れて撮影ができなくなってしまいそうです。
草刈りの終わりが見えないので、ざっくり刈った後は適当に踏みつけて作業場所を確保。いよいよここから、竹で流しそうめんのセットを作ります!
いまからかー……。
いまにも雨が降ってきそうです。というかちょっと降ってきた。
我々がいま大急ぎで作らなければいけないのは、そうめんを流す部分の竹3本と、それを支える3組の脚です。
まずは流す部分の太い竹を、半分に割っていきます。ノコギリだと気が遠くなるので、竹の断面にナタを置いて、カナヅチで叩いて半分に割りましょう。
もちろん私は直接叩こうとしましたが、ナタが傷つかないように間に木づちを挟むそうです。
Iさんに木づちを持ってもらって打ち込むと、早々に木づちの柄が竹につっかえて進まなくなりました。えっ、この先どうしたら……?
しばし呆然としていたら、Nちゃんに「ナタの端っこを叩けばいいんですよ〜」と言われて我に返りました。あっ、そうか。ナタの先端を叩き、根元を叩き、先端を叩き、根元を叩き……割れたー!
竹は「パッカーンッッ!」と鳴って、きれいにまっすぐ割れます。なるほど、「竹を割ったような性格」ってこういうことかー。
竹の節の部分は中で仕切りになっているので、そうめんを流すために取り除かないといけません。
まずはカナヅチで叩いてざっくり割り、さらにノミを使って細かく削っていきます。
ここからさらにヤスリがけをしないといけないのですが、どう考えても間に合わないので、Iさんが助っ人として、近所に住む元風来堂(http://furaido.net)の編集者Hくんを呼んでくれました。
いきなり野性味あふれる庭に呼び出され、事情も聞かずに竹をヤスリ始めたHくん。即座にこのカオスな状況に対応する姿を見て、編集者の凄まじさを痛感。
いよいよ日が傾いてきましたが、ここから脚を組んでいきます。
細めの竹をナタで三分割して(ナタに慣れて割るのが速すぎたため写真なし)、上のほうをワイヤーで縛り、開いて三脚にします。
でも冷静に考えたら1本の竹を分割する必要はまったくなかったのですね。細めの竹を普通に3本束ねるほうがラクだと思います。
開き具合を調節するのがなかなか難しくて、Nちゃんと試行錯誤しながら組み上げたら、そもそも竹がものすごく短いことに気がつきました。
いま目の前に、しゃがんで流さないと使えないそうめん台が。どうしよう。
Nちゃんと静かに微笑み合い、目と目で「もうこれでいっか……」と伝え合いました。この先、仲良く一緒にやっていけそうです。
いや、でも、これ、仕事だった!!
ふたりとも目を真っ黒にしながら作業に戻り、残っていた長めの竹を分割。分割する必要がなかったことを思い出しながら、再度縛って開き具合を調整。あー、日が暮れてきた、日が暮れてきた。
よし、脚ができた! というか、Nちゃんが組んでくれた! Hくんのヤスリがけも完了! めっちゃきれい! プロ? いつの間にかIさんが竹の残りでキャンドルホルダーと麺つゆを入れる器まで作ってくれてる! おしゃれ〜!
私って何してたんだっけ!!!!!
達成感と同時に漫画家の友人、凸ノ高秀さん(https://twitter.com/totsuno?s=09)が缶ビールを持ってやって来ました。
遊びの人が来たことで、殺伐とした現場に失われた遊び心が蘇ります。そう、流しそうめんに必要なのは遊び心……。
なぜか凸ノさんは流しそうめんに詳しく、水の流し加減をレクチャーしてもらいながら念願の流し開始。
あれだけ食べ物で遊んじゃいけないと教わってきたのに、なぜか大人も許容してくれるエキサイティングな食事法、流しそうめん。そうめん自体は普段食べてる麺なのに、キャッチする時の高揚感と、外で食べてる非日常的な興奮で、なんか、すごい、おいしい……!
しかも、このいい匂いがする竹の器、今日自分たちで刈ったんですよ……。最高じゃないですか?
さて、ひと通り流し終わったところで、秋らしい月見そうめんも楽しんでみましょう!
バターできのこを炒めて、温玉を入れ、麺つゆもお湯で希釈してあったかくしてみました。竹の器に入れると一気に本格的な(なんの?)感じになります。
バターと麺つゆと竹の匂いが立ち上がってきて、体も心もぽかぽか。ものすごく雨が降ってきたのですぐ冷めましたが…。
次回はちゃんと天気予報を見てから予定を決めよう……。あと時間配分……。アウトドアの基本……。
【次回予告】
アウトドアってなんだっけという感じの連載初回になりました。次回は虫対策をしつつ、天気予報を見つつ、さすがにアウトドアらしい何かに挑戦しようと思っています。(具体的にはホットサンド!)。
【プロフィール】
姫乃たま(ひめの たま)
@Himeeeno
1993年、東京都生まれ。10年間の地下アイドル活動を経て、2019年にメジャーデビュー。同年4月に地下アイドルの看板を下ろし、文筆業を中心にトークイベントにも数多く出演している。
2015年、現役地下アイドルとして地下アイドルの生態をまとめた『潜行~地下アイドルの人に言えない生活』(サイゾー社)を出版。著書に『職業としての地下アイドル』(朝日新聞出版)『周縁漫画界 漫画の世界で生きる14人のインタビュー集』(KADOKAWA)など。音楽活動では作詞と歌唱を手がけており、主な音楽作品に『パノラマ街道まっしぐら』『僕とジョルジュ』などがある。
HP:
http://himenotama.com/