子供との向き合い方を考えるキャンプ場へ【ライジングフィールド軽井沢】
日本有数のリゾート地である長野県軽井沢町。標高1200mの上信越国立公園内に位置するのが、約4万坪のアウトドアリゾート「ライジングフィールド軽井沢」だ。広大な敷地だけでなく、多彩なキャンプサイト・アスレチック施設などが点在しており、多くのファンが足繁く通っている。企業研修や人材・組織開発プログラム、ワーケーションなどとして利用されることもあり、Google・ヤフーといった企業が活用している。また、軽井沢のほか、長野県白馬村には同様のコンセプトを持つ「ライジングフィールド白馬」もある。
キャンプ場のオーナーは森和成さん。国内独立系コンサルティングファームで、組織開発・人材育成を主領域としたコンサルティングセールス部門営業責任者を歴任。その後、アクセンチュア株式会社にて、経営コンサルタント、ディレクターを経て、2005年株式会社アールギア・グループを設立した。その後、数々の問題意識から、複数の事業会社を立ち上げ、2013年、株式会社ライジング・フィールド設立したという、キャンプ場オーナーとしては珍しい経歴がある。
その一方で、森さんのキャンプ原体験は色濃い。子供の頃から父親に連れられてよく山に入ったという。それはハイキングのようなものではなく、まさに旅。金曜日から夕食抜きのまま土曜日早朝に山へ。小さな森さんは、当然ながら空腹となり、もう歩けない、動けない……という状況に。でも甘やかされることはなかったそうだ。
「『これを食え!』と、親父が川から捕まえてきたのがカエル(笑)。『これ飲め!』と、沢からシェラカップで持ってきた水にはミジンコみたいなものが。でも、それを食べるとエネルギーが沸いてきて、不思議と身体が動くんですよね。その時は親父のことを鬼と思っていました(笑)。でも、大人になってから、ふとこのことを思い出すことがありまして。生き物としての自分、自然の中で生かされている自分、そして、圧倒的な自然の力……、生きるために重要なことを気づかせてくれた貴重な体験だったと思うんです」(森さん)
自然体験活動を通して「生きる力」を高める
森さんがキャンプ場オーナーになったきっかけには、2つの危機意識があった。
「1つ目は、2度の震災体験です。ライフラインが絶たれた状況でパニックになる人々を目の当たりにし、自分も含め、利便性の高い都心での生活に慣れた人々が、人としての本質的な『生きる力』を身に着ける必要性を痛感しました。
2つ目は、25年以上の人材・組織開発の経験から。『言われないと動かない』『創造性が乏しい』『答えを当てにいこう』という傾向を、若者を中心に感じることが多かったです。このままでは日本がダメになるのではないか、子供の頃から学びの場が重要なのではないか、と考えるようになりました。これらから、自然体験活動を通じ、『子供たちの生きる力を高める』『人・組織の可能性を切り拓く』場づくりをと、決心したのです」(森さん)
単なるキャンプ場としてではなく、教育事業としての場へ。『ミッション」『ビジョン』『バリュー』を最重視しているという。
「私たちの“ミッション”は、自然体験を通じて『子供たちの生きる力を高める』『家族の絆を深める』『人・組織の可能性を切り拓く』ことです。その先に描く“ビジョン”(夢)は、『あの時の、あの体験が、今の自分の生きる糧になっている!』と、子供たちが将来大人になった時、振り返ってもらえるような、そんな大人たちで社会を埋め尽くすこと。また、“バリュー”は、『和を成す』です。この場を通じて、家族や仲間との和(絆)を深めたり、新たな和が生まれるような場づくりを大切にしています」(森さん)
そのための仕組みの一つにファミリー・アドベンチャーがある。長年、アドベンチャー教育を手掛け、アクティブラーニング(体験学習)の本家でもあるPAJ社。同社のロープスコースを活用し、前日まで接点もなかった複数の家族が、絆を深め合いながら挑戦するアドベンチャープログラムだ。どんなに頑張っても、仲間の協力がなければ成し遂げられない課題が、次から次へと繰り出される。子供の新たな一面を発見したり、大人(保護者)としての子供に対する向き合い方を考えるきっかけになると評判だ。
子供への向き合い方を考えさせられる場へ
「ここでは毎回、色々なドラマが生まれています。複数家族で挑戦するアドベンチャー中に、突然、泣きだしながら和から外れてしまった小さな子供がいました。『戻ってきなさい!』とパパ&ママの厳しい声。傍観していた他の家族たちも、ファシリテーターの問いかけを機に、自分にできることを考え行動を始めます。そんな中、子供たちは、その子のそばに寄っていく。すると、不思議と満面の笑みで戻ってくるのです。後で子供たちに聞くと、『ただただ、仲間として一緒に遊ぼうと誘っただけ』とのこと。それを聞いたママは、我が子をコントロールしようとしていた自分に気付き号泣……。家族同士の深い絆が生まれることも珍しくないです」(森さん)
理想のキャンプ像は、「コミュニティ」「ラーニング」「ウェルネス」がある場だとも言う。人と人、家族と家族、組織内、組織間で出会い、そして繋がり、絆が深まるコミュニティの場。人、家族、組織が、体験から気づき、学び、新たな可能性を発見し成長できるラーニングの場。一人ひとりが立場・肩書・役割を外して、そのままの自分でいられるウェルネスの場で、これらを実現する場をライジングフィールド軽井沢では目指している。
「場内にあるCafé & BARがあるんです。子供たちが寝静まった後、お客様と一緒に一杯やっていると、『ここに来ると子供たちの手離れが良いのよね』『自分の子供に対する向き合い方を考えさせられる』と、声をかけてもらったり、新たな出会いや深まった絆のお話を聞いたりすることもあります。ライジング・フィールドという自然空間で、子供だけでなく大人も、無我夢中になって遊んでいる姿を拝見できることで、少しずつ理想のキャンプ場に近づいている気がします」(森さん)
森さんの同施設でのお気に入りは、実はスタッフにあるそうだ。スタッフ自らがミッションに基づき、このライジング・フィールドという空間で様々なアイデアを出して、また、実行しているからだ。
例えば、子供たちが思いきり遊べるようにと、危険を排除しながらもタワーやシーソー等をいつの間にか作っていることがある。常設テントにおいても、見た目だけがきらびやかなグランピングではなく、キャンプ初心者でも安心して過ごせることを優先。また、生きる力を高めるためには何が必要かと考え、実際にイベントも実施しているのだとか。
「スタッフ一人ひとりのその“思い”が、僕の一番のお気に入りです」(森さん)
【概要】
ライジングフィールド軽井沢
電話:0267-41-6889
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉 2129
HP:www.rising-field.com