約1万平米に1日5組。「自然との共存」を大切にした夫妻手作りのキャンプ場【WoodMatchM】
約10,000平米のフリーサイトに、キャンパーは原則5組まで。夏休みやゴールデンウィークでも予約を制限し、自然のなかでとにかくゆったりと寛げるのが、岐阜県郡上市高鷲(たかす)町のキャンプ場「WoodMatchM (ウッドマッチム)」だ。
オーナー・本田冬馬さんの祖父が大切にしていた山に、オーナー夫妻が手作りしてこの場所が生まれた。受付小屋やトイレ棟などの建物はご主人が、トイレのタイル装飾や、看板などは奥様が手掛けた。単にDIYがしたかった訳ではなく、これには二人の理念が詰まっている。
「何より大事にしているのは、自然との共存をイメージした上で様々な選択をすること」(本田さん)。この言葉に象徴されるように、例えば建物を保護する塗料ひとつとっても、必ず地面に染み込むことを考えると、選択肢は自ずと完全植物由来のものになる。やがて川や海に流れていく洗剤も同じで、重曹やクエン酸など自然への影響が少ないものを準備し、キャンパーが使えるようにしている。
小さなころから祖父の山で遊ぶのが好きだった本田さんが、地元キャンプ場でのアルバイトを経て、同じキャンプ場に就職したのは当然のことだったのかもしれない。働いていたのはキャンプサイトが100区画以上、コテージ、バンガローを合わせると約50棟ほどもある大きなキャンプ場。そこでチェックイン、アウトの対応、電話対応から土木、大工仕事、水道の配管、掃除やゴミの分別までキャンプ場管理に関わるあらゆる仕事を経験した。
就職先のオーナーがキャンプ場を作った当時の話を聞くうち、本田さんは「自分もやってみたい」と考えるように。本田さんがその夢を話すとオーナーは「始めるなら絶対に早いほうがいい」と背中を押してくれた。そのまま本田さんは小さいころからの遊び場だった祖父の山で「WoodMatchM」のスタートに向かって踏み出した。
本田さん自身のキャンプ経験で思い出に残っているのは、はじめての雪中キャンプ。「スノーモービルでキャンプ場へ行き、雪のブロックを積んだシェルターを作ってのキャンプでした。キャンプ好きの友人が集まって寒さを忘れて楽しみました。雪原の中で入ったドラム缶風呂は、寒さで湯を沸かすまでに3時間くらいかかりましたが、身体を芯から温めてくれるお風呂に浸かりながらの雪景色とビールは最高でした」(本田さん)
しかし現在は、大がかりなキャンプよりも、最小限のアイテムだけを持ち込んで火をおこし、火を焚き続けながらのんびり過ごすスタイルが気に入っているという。こうした変遷が、ゆっくり自然を味わえる「WoodMatchM」の空気感に表れているといえるだろう。
キャンプ場名の由来は「wood match maker=森と人との縁結びの神様」。「その名に恥じないよう、まずは自分たち家族が人と自然をつなぐ縁結びをしていきたい」(本田さん)。できること、気付いたことから自然を大切にするという精神を持って働くうち、その気持ちはお客さんにも伝わっていっているようだ。この場所に流れる空気に魅了され、リピーターは順調に増えているという。
「私たち家族も、キャンプ場と周囲の自然が日々変化する様子を以前より細かに感じられるようになり、自然との距離が近付いているのを感じます」(本田さん)
コロナ渦でワーケーションに注目が集まっているが、PCやスマートフォンをオフにして過ごしたいキャンプのありかたがここにある。
WoodMatchM
岐阜県郡上市高鷲町西洞下野叺3553-41
TEL: 090-8181-8877(受付時間 am9:00~pm6:00)
*予約は電話のみ。問い合わせはメール(woodmatchm@gmail.com)でも受付。
*貸切利用も応相談。