【mont-bell】アウトドアを牽引する“モンベル”が考えるキャンプの醍醐味とは?
1975年、繊維会社で働いていた辰野勇が山仲間の真崎文明、増尾幸子とともに設立したモンベル。
それから47年が経ち、今や日本のアウトドアを牽引するブランドになっている。
創業者の長男であるモンベル現社長の辰野岳史さんに、アウトドアへの想いを語ってもらった。
達人たちのツーキャンなう。あなたの旅道具見せてください! Vol.1
モンベル 取締役社長 辰野岳史さん
1976年、創業者・辰野勇(現会長)の長男として誕生。幼少時より自然で遊ぶ楽しさを知る。
クルマのカスタムショップ勤務を経て2000年モンベル入社。
金属加工の知識を生かし、テーブルや焚き火台の開発にも積極的だ。
おもしろいものを作ってみるモンベルイズム
「〈売れる〉ではなく〈おもしろい〉と感じるモノを作ってきました」と胸を張るモンベル社長・辰野岳史さん。
クライミングとカヤックの第一人者である会長が、仲間とともに「日本の山で快適に過ごすため」のレインウエアと寝袋開発に取り組んだのが同社の始まり。
その後、茶道の野点セットを開発したように、決して登山用の製品開発だけにこだわっているのではない。
このスピリットは現社長である辰野さんにも継承されており、「足が入らず蹴飛ばしてしまうことがなく、高さを変えつつ、家族の足が入るものが欲しい」という思いから、マルチ フォールディング テーブルを開発。
溶接、什器設計という自身の経験と知識がこれまでにないユニークな製品を生み出した。
もちろん、基本コンセプトは創業時から変わらず“ファンクション・イズ・ビューティー”、“ライト&ファスト”。
例えば、リモートワークに適していると注目されるマルチ フォールディング テーブルも機能を極めた結果のシルエットで、安全につながるギリギリの軽さを徹底した。
このコンセプトを守った製品は、アウトドアに限らず日常生活にもスッとなじむのだから不思議だ。
「インナーダウンもクライマーのアイデアですが、丸首で極薄生地のダウンなんて非常識極まりない製品でした。
でもセレクトショップで紹介されるやいなや一気に広まったんです」(辰野さん)
一方、アニメの影響もあり40年以上前から続くムーンライトテントの人気が再燃。現在も売れ行きは好調だ。
「昨年のモデルチェンジにあわせて再検証したんですが、A型フレームは風に強くて建てやすい、まちがいのないフレームだと確信できました。
当時の資料によると、他のテントが壊れた突風にも耐えたそうですよ」(辰野さん)
初登場から40年後の今、最新素材を取り入れることで次の世代に通用するテントとなったのがおもしろい。
ミニマライズで幸福なキャンプを
「今はキャンプのスタイルも遊び方も多種多様。スーパーカブでソロキャンプをする人がいるし、スポーツカーでもトランクに入るだけのコンパクトな装備でキャンプに行くのだってあり。
モンベルの製品はこうした限られた道具を使うミニマムなキャンプにマッチします」(辰野さん)。
キャンプ場を見渡すとサイトいっぱいに道具を並べるキャンパーの姿は珍しくない。
これらもアウトドアを楽しむひとつのスタイルだが、モンベルが目指すキャンプとは一線を画している。
「軽自動車にコンパクトな道具を積んで、マットだけ快適なものを使うとかね。
リッチで快適、ミニマライズで幸せなキャンプ。それがモンベルの目指すキャンプかな」(辰野さん)
日常生活とは違う環境で工夫をしながら快適な時間を目指すのがキャンプの醍醐味だ。
なによりも 「考える」ことが日常となり、有事の際に自分の手でなんとかするトレーニングにもなる。
子どもが「自然遊びはおもしろい」と思う環境を
辰野さんは幼少時より自然遊びのおもしろさに目覚めたが、今の子供たちにもやはり自然に親しんで欲しいという思いがある。
「今の子たちは原体験の場があまりに少ない。キャンプは自然の不便さ、楽しさを直接体験できるいい機会」(辰野さん)。
本やインターネットで得る間接体験ではなく、火おこしや水くみをする原体験は生きる力を養うために不可欠だ。
モンベルが主催するイベントでは子どもが自然遊びに熱中する一方、父親が火おこしのコソ練をする姿も。
子どもばかりではなく、原体験が少ない親世代も増えているのが実情だ。
「2022年度より、鳥取・大山店のすぐそばにある環境省のキャンプ場を管理することになりました。
起伏にとんだキャンプ場で、登山前に車中泊ができるなど、いろいろな過ごし方ができる施設になります」(辰野さん)
親子で気軽に参加できるイベントやキャンプ体験ができるフィールドづくりは業界の大きな課題。
環境イベント、地方自治体との包括連携協定はモンベルが未来のことを考えた答えといえる。
聞き手/大森弘恵
写真協力/モンベル
出典/ガルヴィ2021年12月号
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