誰もがひとつは持っているキャンプギアブランド【ユニフレーム】ってどんな会社?
1985年、「ユニークな炎(フレーム)を創造する」を理念に、金属加工会社「新越金網」から独立したのがユニフレームの始まりだ。
以来、幅広いラインアップで、どれもがひと目で「ユニフレーム製だ」とわかる、独創的な製品を世に送り出している。
今回は、ユニフレーム事業を展開する新越ワークスの山後春信社長にモノづくりへの思いを語ってもらった。
新越ワークス 代表取締役 山後春信
「新越金網製造工場」を起こした創業者の後を継ぎ、2004年、代表取締役社長に就任。
障がい者雇用、キャンプ場支援、ペレット普及推進など、人と自然にやさしい経営に定評がある。
日本人の生活様式に合う製品作り
ユニフレームが誕生した1985年は、90年代初頭のオートキャンプ・ブーム前夜。
80年代に登場したパジェロやランドクルーザーが注目されはじめた頃で、まだ日本でオートキャンプという言葉がなかった時代だ。
「最初は工芸用トーチや冬の釣り場で使うことを想定したワーム(ガスヒーター)を作っていました。
2018年まで販売されたロングセラーですが、新潟の無名の会社が作ったガス製品なんて当初は手に取ってくれません。釣り雑誌に取り上げてもらって、じわじわ広まったという感じです。
その後、卸しをしている会社の人に〈どうやらオートキャンプというものが流行りそうだ〉と聞いて、ツインバーナーUS︱2000を発売。
これがオートキャンプ用品第一号です」(山後社長)
87年公開の映画がスキー人気を後押しし、同時に雪道に強いRVが大ブームに。
見立てどおり、夏はキャンプをしたり河原でBBQをしたりするRVユーザーが増加した。
ただ、オートキャンプを知る者は少なく、アウトドア専門誌すら一歩引いて様子を見ていた状況だ。
「情報もなにもないし、オートキャンプの道具は欧米からの輸入品ばかり。
日本人が使いやすい道具を作ろうと思って始めました。
だからガソリンツーバーナーではなく、カセットガスのツーバーナーなんです」
この「日本人の生活様式に合う製品作り」が、現代まで続くユニフレームらしさの原点だ。
アメリカ生まれの文化だから日本流にカスタム
「アメリカではお父さんがグリルで分厚い肉を焼き、家族にサーブして食べます。
ところが日本では薄い肉を焼くのでコンロの周りに立って食べるしかない。
だったら焼き肉屋のように卓上で焼いて食べられるようにしようと考えたのがユニセラです。
SNSもない時代ですから最初は苦戦。
専門店の人がプライベートで使って推薦してくれたり、使っているのを見かけた人が手に取ってくれたり、じわじわ広まったのを覚えています」
数多くの日本らしい製品が誕生してきたわけだが、ユニフレームではあえてパテントを取っていないという。
「日常的に使うキッチン用品は少しでもよいものが選ばれますが、キャンプ用品は趣味の道具。
少しくらいの違いではオリジナルが好まれるんです。
それにシェラカップは全世界に広まっていて、もうパクリ商品とは言えない存在です。
パテントで守るという考えもありますが、私はユニフレームがオリジナルである製品が多くの会社で作られるような、いつかシェラカップ的な存在になればと考えています」
そんな山後社長も、現在は開発の第一線を退き社員たちにまかせている。
「黒皮鉄板のダッチオーブンは、鋳物にはない精巧なダッチオーブンを作りたいという協力工場の提案から誕生。
新作のブッシュクラフトナイフは若手社員の提案を形にしました。
ものづくりは作りたいという熱意が何より重要ですし、作っている本人たちが製品について一番理解していますから」
気軽に自然を楽しめるようになってほしい
ユニフレームには公式SNSがなく、メディアへの広告もほとんどない。
社員の発信だとわざとらしくなりかねないのがその理由だ。
「古い考えかもしれませんが、私たち製造業はいいモノを作ることが第一で、それを各メディアに取り上げてもらうのが一番リアル。
製品が何よりの広告です」
今のキャンプの盛り上がりについて、どう見ているのか教えてもらおう。
「花見の域を出ていないように思います。道具に囲まれ、みんなで食事をしてという。
でも、身近な自然でひとり静かに星空とコーヒーを楽しみ、宿に帰るというような過ごし方でもいいわけです。
フィンランドは世界一、自然を楽しむ時間が長いそうですが、現地の店を訪れても道具は思いのほか少ない。
自然を楽しむすべを知るほど少ない道具でも楽しめるのでしょう。
モノが売れないと私たちは困りますが、日本でも道具に縛られず、もっと気軽に自然を楽しめるようになってほしいですね」
「また、日本はキャンプ場が圧倒的に足りないし、売り上げがあるのは週末のみ。
今は平日でも利用者がありますが、ブームが一段落しても安定して運営できるビジネスモデルが早急に必要です。
業界の未来はキャンプ場が元気であることにかかっているので、ビジネスモデルの提案も考えていますよ」
聞き手/大森弘恵
写真協力/新越ワークス
出典/ガルヴィ2021年10月号
あわせて読みたい
【徹底考察】意外と知らない!焚き火の着火剤として使える便利すぎるものとは?
焚き火の後片付けで“絶対NG”なこととは?「就寝するまでに…」
優秀すぎる…!現役キャンパーが選ぶ買っておいて良かったキャンプギア8選